農園長『錦織』の想い

2017年現在、熱海市における農業経営者の年齢構成は、

60歳以上の割合が90.5%

70歳以上の割合が50.9%

(平成29年3月あいら伊豆農業協同組合柑橘委員会資料より)

 

簡単に言うと現在の熱海市の農家は、

10人中9人が60歳以上で、そのうち5人が70歳以上

という状況。

 

これが熱海市の農業の現状だ。

このデータを見たときは正直、驚いた。

 

また私自身、熱海に帰ってきて、お借りする畑を探していても、

畑なのか山林なのか判別しづらい土地を目にする事が多かった。

 

それもそのはず、平成28年1月段階で熱海市の遊休農地(現在使われていない農地)は、

全体の49%ほぼ半分が使われていないのだ。

 

しかも、このデータに出てくる残りの51%の中にも、一見して管理はしているが実際は農業生産をしてない箇所なんてざらにある。

 

農地なんて2年も放ったらかしにしては、再生させるのに多大な労力とコストを要する事は、

前職の農業法人勤務時代から良く知っていた。

 

しかし、そんな熱海の畑を見て、驚愕した。

 

そんな比じゃないのだ。

 

雑草が年月を経て、雑木と化し、ほぼ山林化した畑。

伸び放題だった雑草を草刈り機で刈っていると、刃に様々なものが当たる。

イノシシなどによって崩された石垣、

草に埋もれて見えない、前の地主様が設置したであろう農業資材、

雑草除けに敷いたと思われる古いカーペット(これは最悪刃に絡まる)、

なぜこんな所に?と目を疑う水槽や粗大ゴミなど。

おかげで草刈り機の刃は何枚もすぐに使い物にならなくなった。

 

道幅的にも、畑の形状的にも、畑へのアクセスが悪く、

トラクターやパワーショベルのような大型機器が入れない畑も多く、

人力での作業を余儀なくされる場合が多い。

 

熱海において遊休農地、耕作放棄地を再生し使うまでに、

踏まなくては行けない手順として個人的見解で整理すると、

①雑草を刈る(草刈り機)

②雑木を切る(チェーンソー)

③切った雑木を処理する

④畑内のゴミを整理、適切に処理する

⑤崩れた石垣を整備する

⑥地面を出し、畑の区画を理解して作付け計画を練る(段々で複雑な形が多い)

⑤土作り、作付け

 

関東平野部では、

①雑草が生えていればハンマーナイフやトラクターで整備

②作付け計画を練る

③土作り、作付け

これで良かった。これだけで良かったのだ。

 

熱海でこんな苦労せずとも、内陸側の函南町や、伊豆の国市、伊豆市には、

一枚広くてきれいで、雑木なんて生えておらず、トラクターも入れて、すぐに作付け出来るような、

よだれが出るほどのいい畑が空いている。なんなら水田も空いているのだ。

 

そんな好条件な畑に目移りしないと言えば嘘になる。

実際に函南町の職員様からは有り難い事にお声がけを頂いている。

取りに行こうと思えば行ける。

しかし、一つの事が頭に引っかかった。

 

本当は引き継がなくては、後世に残さなくてはならなかった知的財産とも言える、

農業技術、生産者の想い、代々受け継がれて来た信念、、、

そこには「想い × 行動 × 年月」と非常に重みのある、

先人の方々が一つ一つ積み上げた膨大な数の畑の石垣の様に、

一朝一夕では築き上げられない、人間の強い想いのエネルギーが確かにあったはずだ。

 

それを昨今どこでも聞いた事のある「農家の高齢化」「担い手不足」などと

「日本全体の問題だから仕方が無い」と一言で片付けるのは簡単だ。

しかし、

それで良いのか?

それが正解なのか?

それがベストを尽くした結果なのか?

 

いいや、

私はまだまだやれると思う。

こんなもんじゃないはずだ。

 

先人達はもっと過酷な条件の中で畑を、時代を切り開いて来たはずだ。

そんな先人の方々に、現代のこんな恵まれた環境の中で時代どころか目の前の畑も切り開けないようじゃ、

どの面下げて「熱海の農業の未来背負ってます」なんて言えるのか。

 

ふざけるな。

 

こう、私自身に言い聞かせ、日々私なりに農業問題に向き合っている。

 

だから、私は”あえて”熱海市での農業にこだわることにした。

 

誰も代わりにやってなどくれないのだ。

私のような新参者が入って来やすいようになど基盤の整備はしてはくれないのだ。

そんな世の中都合良くは出来ていないのだ。

 

では、誰がその役をかうのか?

指を咥えて待っていればいつか誰かが来てやってくれるのか?

 

いいや、いくら待っても誰も来てなどくれやしない。

誰もやってなどくれない。

 

俺がやるしかないだろ。

ならば、やってやる。

『熱海』でやってやる。

 

そんな熱海に帰って来た馬鹿な若者の挑戦が今ここから始まる。